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最高裁判所第三小法廷 昭和42年(オ)902号 判決 1968年2月06日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について。

所論の点に関する原審の事実認定は、挙示の証拠関係に照らして肯認することができ、その事実関係のもとにおいては、上告人は、被上告銀行の荒尾支店長であつた訴外橋本健治から訴外渡辺勝則、同渡辺貞子および被上告銀行荒尾支店長の共同振出の形式による本件手形二通の振出交付を受けた際、右橋本に被上告銀行を代理して手形行為をする権限が存在しないことを知つていたもので、被上告銀行は本件各手形について上告人に対し支払の責を負わない旨および訴外橋本に本件各手形行為をする代理権が存在せず、また、その原因関係であると上告人において主張する契約締結の代理権が存在しないことを知つていた以上、上告人は、被上告銀行に対して民法七一五条に基づく損害賠償責任をも問うことはできない旨判示した原判決の認定判断は正当として是認することができる。したがつて原判決に所論の違法はなく、論旨は、ひつきよう、原審が適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美)

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